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2015年7月[Sanada発 現場から]


[米中経済の現状]

[はじめに]
 規模で見た場合、世界第一位の経済大国は米国であり、2013年の確報基準では国内総生産(GDP)は16兆8,000億米ドルとなっています。
 これに続いて世界第二位の経済大国は中国本土であり、同9兆2,000億米ドルとなっています。
 その世界第一位と第二位の米中経済が今後の世界経済に少なからぬ影響を与えることは言うまでもありません。
 そこで、今回は最近の米中経済について、概観しておきたいと思います。

[米国経済の動向について]
 世界経済の成長は今後、一体どうなるのでしょうか?
 世界経済の牽引役とまで言われた中国本土経済の成長にも陰りが見られ、中国本土政府も明らかな金融緩和政策姿勢を示し、先行きに不安が出てきていることは明らかでありましょう。
 これに対して、米国の金融当局は、自らが誘導した「行き過ぎた広義の信用創造」の修正に向けて、
「金融引き締め姿勢」
を示そうとしており、具体的な実行は間近であるといった見方も実際に強まって入るものの、その前提はやはり、米国経済のある程度の成長が担保されていることにありましょう。
 そうした意味でも米国の経済動向は気に掛かります。
 こうした中、米国政府・商務省は、
「本年第1四半期(1〜3月)の米国の国内総生産(GDP)が前期対比で年率換算0.7%減となり、4月末に発表した速報値である0.2%増を0.9ポイント下回った。」
と発表しました。
 そして、四半期別の経済成長率がマイナスに転落するのは、昨年第1四半期以来1年ぶりとなることを意味しています。
 米・商務省は、
「速報値を発表した時点と比べ、輸入が増加し、民間部門の在庫投資が減少するなど、GDPの変動要因があった。」
と説明しましたが、その直後のニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が0.6%下落しました。
 第1四半期の不振は米連邦準備理事会(FRB)も予見していたことでありました。
 連邦公開市場委員会(FOMC)の一部委員は今年4月の定例会合で、米ドル高による輸出低迷や原油安による投資不振が予想よりも長期化、深刻化し、米経済に影響を与える可能性があると懸念していたことも指摘されています。
 しかし、一部には第1四半期のGDPが毎年、他の四半期よりも低い数値になる点について、
「統計上の誤差である。」
との楽観的な見方もしています。
 これらを受けてまた、サンフランシスコ連銀は、第1四半期の経済成長率を1.8%と推定した報告書を発表した上で、
「冬季の統計的季節調整にも拘わらず、季節性を取り除ききれずにいる。
追加的な補正作業が必要である。」
との意見を示しています。
 色々と申し上げましたが、いずれにしても、様々な見方が交錯する中、米国国内では、第2四半期には米国経済が再び本格軌道に乗ると見る向きが多いようです。
 ブルームバーグが128の機関を対象に集計した米国の第2四半期のGDP成長率予測値は2.65%であり、第3、4四半期はいずれも3.0%となっていることからも、そうした楽観的な見方が多いことが推測されています。
 そして、こうした背景には、
「新規雇用者数が増加するなど、雇用指標が好調に推移しているほか、輸出企業の実績を悪化させてきた米ドル高も緩和され、経済成長率が押し上げられる。」
との見方であるようです。
 尚、こうした見方を総合して円・米ドル相場を考えてみると、今後は、米ドル高は一旦、調整される、即ち、円・米ドル相場で言えば、125円を軸とした攻防が今後暫くは続くと見ておいて良いでしょう。
但し、日本の金融当局の相場観と中国本土経済の行方、更には複雑な国際情勢と不確定要因が多く、きめ細かい見通し、予測を続けなければいけないことには、変わりがなさそうですがーーー

[中国本土経済ついて]
 それでは中国本土経済はどのように見られているのでありましょうか。

「中国本土政府が発表するデータの信憑性は?」
と言った疑問や不信感があることを筆者も認識、また、筆者の経験と現場感覚からすると、
「このデータは本当か?」
と疑問に思うものも中国本土政府発表のデータの中には確かにあります。
 しかし、それだからと言って、中国本土政府以外の外部機関が示すデータの信憑性も本当に高いのかどうかは、はっきりしません。
 従って、筆者は、中国本土経済を概観する際には、
「中国本土政府が発表するデータの詳細には疑問の余地なしとは言えぬものの、大局的に見れば誤りでないであろう。」
と言うことを前提にして、細かい定量分析は敢えてせず、
「その全体像を把握する。」
と言う分析の手法を取っています。
 そして、そうした視点から現在の中国本土経済を概観すると、
「2010年までの数年間は、外需を軸に内需も順調に発展、この外需と内需のバランスの取れた成長が背景となって二桁成長を記録してきたものの、最近では、特に世界経済環境の悪化を受けて、外需の落ち込みが見られ、経済成長全体が鈍化、2014年は7.4%成長に留まると共に、2015年は7%成長に更に鈍化、或いは、場合によっては、7%を割り込むかもしれない。」
との見方が広がっており、輸出の鈍化が進む中、これを内需、就中、個人消費でカバーすることが出来ないと見られることから、結果的には、
「中国本土経済の成長鈍化は顕在化してきている。」
との総括が出来るのではないかと思います。
 また、中国本土政府が2009年に実施した景気刺激策によって溢れ出た資金が国内に滞留、これが国内不動産市場を一時的には下支えしたものの、最近では、不動産価格の下落の中で、
「バブル崩壊リスク」
も囁かれ、或いは、財政出動を伴う景気刺激策の中で、
「政府、就中、地方政府の過剰債務問題が顕在化してくる。」
と言うリスク要因も加わり、中国本土経済に対する不安は、一般的、相対的には拡大しているものと言えましょう。
 更に、筆者ではなく、中国共産党幹部がしばしば指摘する、
「電力消費量と鉄道輸送量から見る中国本土経済」
と言う視点から眺めれば、この二つとも最近では4%には届いておらず、こうした結果からすれば、
「中国本土経済の成長度合いは、事実上、4%を下回っているのではないか。」
と言った、相当悲観的なものまで出てくる始末です。
 こうした中で急激に進む円安を背景に、為替要因でキャッシュリッチとなった一部の中国人は、この為替でのメリットが顕在化している内に、利益を確保しようと、日本に来て、
「不動産を含めた爆買い」
を行い、富の確保に執心、国内での消費の伸びが顕在化しない中で、海外での中国人の消費行動を支えているようにも見られます。
 また、格差が存在していても全体的な経済成長が維持されて来た時期とは異なり、最近の成長鈍化は、格差を意識する層の不満に直結し始め、社会不安にまで拡大してしまう危険性を匂わせ始めているのであります。
 こうしたことから、中国本土政府は、金融面を充実させる為のアジアインフラ投資銀行を一つの契機に、経済の流れを変え、中国本土が主導する、
「新たな、自由貿易協定、経済協力協定」
と言ったものをも設立して、経済発展へと再び、中国本土経済を誘導しようとしていると思われます。
 今後の動向を引き続きフォローしたいと思います。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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