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2016年5月[Sanada発 現場から]


中国、台湾の動きと日本


はじめに

 日本株も含めて、先進国の株式市場はどうも、
「弱含み」
で推移しています。
 本当に心配であります。
 日本では、国を挙げて何とか株価維持の方向に動いており、外国人投資家も、何とか、
「日本株を買い持ち堪えて日本はもとより先進国株式市場の連動的暴落を回避しようと頑張っている。」
ように、私には見受けられますが、それでも、外国人の優秀なる機関投資家にも少しずつ不安が拡大してきているように思われます。
 先進国の株式市場の中では、難民から始まり、テロも発生している欧州の情勢に明るさが見えず、欧州株式市場の先行きに明るさが見えぬことから、米国や日本の株式市場にもなかなか勢いが戻ってこないように見られます。
 こうした中、次のような情報が流れました。
 即ち、
「海外投資家の日本株離れが目立ってきた。」
との見方が公にも出てきているのであります。
 これは、日本の財務省が発表した2015年度の対外・対内証券売買契約状況によって明確にされているものであり、これによると、外資系金融機関の海外支店などを通じて投資家が日本株を538.5兆円買ったのに対して、売った金額は544.9兆円となり、その差し引きで、6.4兆円の「売り越し」となったと報告されたのであります。
そして、この海外投資家による日本株・売り越しは欧州財政危機が顕在化した2011年以来であり、リーマン・ショックが起きて、8.1兆円の売り越しとなった2008年度以来の大きな規模となっているとも見られています。
 先進国株式市場を支えようと、何とか日本株売りも踏みとどまってきている外国人投資家の売りが今後も増していくと、日本政府筋の日本株買い支え策にも拘らず、更に日本株が下落、この結果、株の下落を円高で取り戻そうとする外国人投資家たちの動きが暫く続き、円・米ドル為替相場も年内には100円前後まで円高となる可能性が更に高まるものと思います。
 今後の動向を注視したいと思います。
しかし、こうした市場の不透明感が存在する中、中国本土や台湾は堅実なる動きを示しているようにも思われます。

 そこで、今回は、以下に「AIIB」と「鴻海」の動きを取り上げてみたいと思います。

AIIBの始動

 私が見るところ、中国本土は覇権を強く意識し、金融覇権も強化していく姿勢を一昨年6月より急速に強めています。
 そして、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立、BRICS銀行の設立、更には、通貨・人民元の国際通貨基金のSDR構成通貨入りなどを進めると共に、金融大国・英国との外交関係強化にも成功してきており、その影響力は着実に強まってきていると思います。
 こうした中、そのAIIBは、国際機関である世界銀行と協調融資を実施することで合意しました。
 これにより、中国本土の金融覇権は更に一歩前進するものと思われます。
 念の為に申し上げますが、これにより、「中国本土が設立を主導したAIIB」が、日米欧中心の既存の国際金融機関と協調融資を具体化することとなり、これはAIIB設立後、初めてのこととなるのであります。
 AIIBの設立を反対してきた日米にとっては、日米欧を中心とする現行の国際金融秩序にAIIBを取り込みたいとの思惑があり、一方、融資のノウハウを国際金融機関である世銀から学びつつ、事業拡大をし、事実上の存在感を強めたいと考えるAIIB=中国本土政府の思惑が一致したものと思われます。
 これにより、AIIBは、本格的にデビューしてくることとなるのであります。
 今後の顛末は別にして、一旦、中国本土政府の思惑に沿って動き始めたことを私たちは認識しておくべきでありましょう。

SHARP・鴻海Deal、もう一つの見方

 中国本土と同様に台湾の動きも注目されます。
その台湾と日本が連携して、日本の立ち位置が守れないか、私は次のように考えています。

世界的な技術をたとえ保有していても、経営を間違えるとその企業は破綻します。
企業価値の一つでもある技術を経営に対して賢く使わなければならないと言うことであります。
そうした意味で日本の名だたる企業の中でも、特に最近では、
「グローバル戦略化」
に失敗し、規模のメリットを取り損ない、大量生産・大量販売のビジネスモデルの中で価格競争に敗れた企業は、破綻の道を歩みがちであり、最終的には、規模のメリットを追うことに成功している企業に統廃合されていくと言う憂き目を味わう、そうした傾向の強い昨今の国際ビジネスの世界であります。
文字通り、グローバルシェアを巡る、「食うか食われるか」の弱肉強食の世界となっており、SHARPは正にそうした競争に敗れたとも言えましょう。
一方、そのSHARPを飲み込む鴻海は勝ち組かと言えば、必ずしもそうではなく、だからこそ、鴻海が持たず、SHARPが保有している、
「技術とのれん、そしてブランド価値」
を求めて今回のDealに至ったことは明白でありましょう。
鴻海は、今後、この技術とのれん、ブランド価値を守れるSHARPの人材は利用しましょうが、それに値しないとする人材は間違いなくカットしてくると思います。
私の台湾の大手企業のビジネスマン達と仕事をした経験からすると、彼らはそうしたことには大変シビアであったことから、そう予測する訳であります。
もちろん、この予想は大いに外れて欲しい予想であります。
いずれにしても、こうしたことは、資本主義自由経済に於ける栄枯盛衰、致し方ないことであります。
しかし、これをTake Chanceし、日本にとって、日本経済にとって有効に用いていくことが、私たちの義務であり、そのために知恵を図っていくべきであると私は考えています。
そして、台湾を見た場合、一般的、相対的に言うと、台湾ビジネス界は、この鴻海同様、規模の経済性を求めるものの、技術やのれん、ブランド価値に欠ける企業が多く、その結果、市場が大きく規模のメリットを取りやすい大国である中国本土に対する依存度が高くなっており、このままでは、中国本土との政治的対等性を維持できないと思われます。
従って、日本がその点をカバーして上げるべく、今回のような連携を深めていくことに意義があると考えていますが、企業連携の組み合わせとしては、今回のような日本と台湾の大企業同士の連携ではなく、台湾の大企業と日本でこれまでSHARPを支えて来たような中堅中小企業の組み合わせによって、日本経済にも大いにメリットがある連携を進めていくべきであると考えています。
たとえば、SANYOを買収した中国本土のハイアールがコインランドリー用の洗濯機を生産する際、買収したSANYOの技術によってなんとか洗濯機までは作れたものの、コインランドリーのお金を授受するパーツは作れず、そのパーツの生産は日本の中小企業に任され、この中小企業は今、大いにビジネスメリットを享受していますが、このケースからの考えられるように、たとえば、これまでSHARPを支えてきたサポーティングインダストリーズ企業と鴻海との連携を組織的、体型的に組み、鴻海だけでなく日本経済にとってもメリットが実感できるようなビジネス連携を産官学金労が知恵と力を合わせ、その一つの主たる対象を台湾の大手企業にして、連携促進の展開をして行けば、日本の中小企業も大いにメリットを享受できる道を掴めると私は考えています。
如何でしょうか?

 世界の金融市場は不安、着々と動く中国本土を意識した時、台湾との本格的な連携を日本として考えてみても良いのではないかと思います。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。



引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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