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2016年7月[Sanada発 現場から]


消費税引き上げ延期に思う


はじめに

 皆様方が如何に企業運営を完璧になさっていらっしゃっても、肝心の、日本国の状況に不安があると、皆様方の企業経営に、直接的に、或いは間接的に悪影響を及ぼします。
 そうした意味でも、日本の国家債務状況に向けられた内外の不安要素は払拭せねばならず、そうしたことを意識して、予定されていたものが、
「消費税の引き上げと国家債務の縮小トレンドへの導き」
であったかと思います。
 しかし、その消費税引き上げが延期されようとしています。
 今回はその点についての私見を述べてみたいと思います。
 少しでも、ご参考になれば、幸いであります。

日本の消費税問題について

 伊勢志摩サミット開催直後、安倍首相は、
「消費税を8%から10%に引き上げすることに関して2年半延期する。」
ということを決心したとコメント、自民党内の様々な議論がある中で、一応の説得を行い、その上で、もともと消費税の引き上げには慎重な姿勢を示してきた連立与党の公明党の賛同も得て、議会の議論も経ずに、
「国民に対する説明」
と言う形で、事実上の、
「消費税引き上げ延期」
を内外に示したことはご高承の通りであります。
 国際社会の混乱、欧州情勢を背景とする先進国経済破綻の顕在化リスク、為替相場を含めた国際金融市場の混乱拡大、そして日本経済の成長原動力の欠如などを背景として、景気回復の契機が見出せぬ中、
「消費税引き上げを決行することによる更なる内需冷え込みを起こしかねない。」
とする見解を示したことは、取り敢えず、私たち、
「一般市民」
の耳障りのいいコメントであったと思います。
 更に、そもそも、
「消費税引き上げは内需を冷やしかねず、反対であった。」
とする向きには、
「やっと政治家も消費税引き上げのマイナス面を認識できたのであるな。」
と我が意を得たりとする感覚を持った方も多かったのではないかと思います。
 しかし、そうした意見や状況があるにも拘らず、これまで、与党自民党が主張してきた、
「消費税引き上げ」
の目的は、
「不健全な日本の財政状況を少しでも改善し、国際金融市場の理解を勝ち取り、国家経済の安定的運営基盤を構築すること。」
が目的であったはずです。
 そうした背景を思い出せば、ただただ単純に国民の耳障りのいいようなコメントに終始するのではなく、更には、国際金融筋も意識しつつ、
「消費税延期を現段階で実施することにより、内需は消費税引き上げする際よりもOO円拡大し、その結果として、税収も結局は消費税引き上げをするよりもOO円拡大する。
 その想定税収を以って、国家負債をOO円減少させ、国際金融市場が懸念しているような日本の国家負債の減少を徐々にではなるが具現化させていく。
 従って、当初予定を延期することには、論理的な根拠もあり、内外の関係者は日本政府の苦渋の決断を理解して戴きたい。」
と具体的予測数値もしっかりと織り交ぜながら、きちんと説明すべきであったのではないかと私は考えています。
 国際社会への配慮を忘れぬ安倍首相のことでありますから、サミット参加の主要国首脳の皆さんには消費税引き上げ延期に関する理解と同意を得ていたのではないかと思いますが、上述したような丁寧な説明を怠ったことから、
「Moody’s Investors Serviceからは日本国際格下げウォッチを掛けられ、日本国際の格付けが更に低下する、その結果として、日本国債を保有する外国人投資家の日本国債売りを助長、結果として日本経済の悪化を導いてしまうのではないかと思われる。」
といった不安要因をむしろ拡大させてしまったかもしれません。
 国際金融筋が、韓国に対して、
「構造改革が進まないと韓国のカントリーリスクは更に悪化する可能性がある。」
といった主旨の反応をしていることと同様に、
「財政改革をゆっくりでも良いから進めていく。」
といった国家の基本姿勢を内外にきちんと説明し、特に外国人投資家の理解を得ないと、消費税引き上げ延期が、
「日本経済の更なる悪化」
の遠因ともなり得ません。
 そしてまた、直近、三菱東京UFJ銀行が国債引き受けの優先資格を返上するのではないかとの報に接し、国際金融筋の動揺が広がると、上述したMoody’sの格下げ見通しとの「合わせ技」で、更には、東シナ海での不穏な動きが引き金となって外資勢が日本国債を手放し始めるといったことによって日本国債の価値が下がることが顕在化、即ち、国債の金利が上がり、これが日本の国家債務負担の大幅増加の原因、ひいては日本経済の破綻をイメージさせる兆候にもなりかねません。
 消費税引き上げ延期の判断が国際金融市場に与える影響とそれに伴う日本経済再生の可能性、度合いの確認を行っていかないと、現代日本にとってはリスク要因となるものと考えます。
 事態は厳しい中で推移していると見ておきたいと思います。

引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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