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2016年8月[Sanada発 現場から]


中国本土の動きに思う


はじめに

 現行の世界情勢の中で、中国本土は無視できない存在となっていることは言うまでもありません。
 しかし、その中国本土は、少なくとも、私の目には、最近、身につけてきた経済力とこれまでも持つ政治・外交・軍事力などを背景にして、国際社会に対して、
「言った者勝ち、やった者勝ち」
的な行為を繰り返してきているように映ります。
 今月はそうした中国本土の動きを見てみたいと思います。

法治と中国本土、ロシア

 現行の世界秩序の根幹には、
「貨幣経済社会である。」
と言うことと共に、
「法治社会である。」
ということがあると私は考えています。
 そもそも、法治社会の根幹となる法治国家とは、
「その基本的性格が変更不可能である恒久的な法体系によって、その権力を拘束されている国家。」
と定義されています。
 これは、近代ドイツ法学に由来する概念であり、国家に於ける全ての決定や判断は、国家が定めた法律に基づいて行うとされており、この国家を理想とする思想を法治主義と呼んでいるのであります。
 社会に於ける階級が激しく対立していた当時のドイツにおいて、法律に従った、法律による、国家の統治を実現することによって、国家内部における客観的な法規の定律及び行政活動の非党派性を保障して階級対立を緩和し、臣民の権利ないし自由を保障する実質的な内容を有していましたが、その後、形式的で法技術的な原理に転化し、最終的に定着した概念とされます。
 こうした中、法による支配を、
「そもそもその基となる“法”そのものが悪法である。
現実にそぐわない。」
とする視点を前面に押し出しつつ、
「ロシアはウクライナ問題に関する国際法での秩序に反発し、中国本土は南シナ海問題に関するハーグの仲裁裁判所の決定を認めようともしていない。」
といった事態が今、発生していると私は見ています。
 いずれも、
「国際法」
というものに「罰則」という大きな重しが掛かっていない、即ち、拘束力がないことからする事態と見られ、だからこそ、当事国は、こうした第三者の法的判断を自らには不利と看做すと最終的には受け入れないとする事態が起こる可能性が出るのであります。
 即ち、
「Legal Obligation」
そのものが弱いので、法的拘束力の弱さを背景に法的判断が事実上意味を持たなくなるのであります。
 こうした中、その法的判断に意味を持たせようとすれば、法的罰則はなくとも、
「法の秩序、裁定を守らぬものは社会から退出をせよ。」
といった、
「Moral Obligation」
が強まらぬ限りは、効果を示しにくいものであります。
 中国本土やロシアはそれを知ってか、自らの経済力や外交的影響力を巧みに使いながら、国際法体系の中での判断を事実上、無視する動きに出ていると言えましょう。
果たして、今後、世界が中露両国に対して道義的な責任を求めていくのかどうかが注目され、その間は中露共に、これを無視し続けるものと思います。
 尚、ロシアのスポーツ選手のドーピング問題に関しては、領土問題と比較した場合のことの重要性の相対的な低さと国際社会の道義的責任追及力が強いことから、ロシアの一部譲歩の可能性は示唆されている点は参考として、眺めておきたいと思います。
 法の支配の限界を感じる中、法の威信を改めて示してもらいたいと私は期待しています。

中国人の喧嘩の仕方

 そこで、後段は、私が感じる中国人の喧嘩の仕方というものを示したいと思います。

 私は、まだ、幼稚園児であった時、公園で私の遊び場を奪い取った小学生たち四人に対して、無謀にも喧嘩を挑み、彼らに、所謂、
「ボコボコにされた。」
という経験があります。
 その際には、近所の小学校高学年のお姉さんが私を助けてくれましたので、それで済みましたが、この時の喧嘩は今でも忘れません。
 私自身、
「例え、負けると分かっていても、義を立て、立ち上がることこそが人のなすべき道である。」
と今も考えており、戦うことをただ単に悪とは考えていません。
 しかし、その反面、
「喧嘩っ早い」
のであり、これはやはり問題であります。
 本来は、慎重に、慎重に戦略を練ってから戦いを挑むべきであり、闇雲に戦っても、
「義」
だけでは勝利出来ません。
 こうした中、私が知る中国人の多くに見られる特徴は、
「負ける喧嘩はしない。」
と言うことであります。
 しかし、それは、
「戦わない。」
と言うことではなく、必要があれば、世代を跨ぐと言う、
「時間を掛けて」
でもじっくりと情勢分析をし、長期の戦略を持って戦いを挑んでくるのであります。
 それは、あたかも詰碁のようであり、その術中に見事にはまってしまうと、気がついた時には、
「蟻地獄にひきづり込まれた蟻」
の如く、彼らの罠にはまり、戦いに敗れます。
 そうした彼らのやり方は、先ず、自らが、勝てると確信が持てるまでは、
「相手にへりくだる。」
「相手を上手に立てる。」
「相手と対等に戦えるところだけ、意見交換と言う戦いを挑みつつ、鍔を合わせながら、相手の力量を探る。」
「自らよりも弱いと言うものに対しては上手にこれを懐柔し、味方につける。」
「相手との対等の関係を構築する。」
と言った行動を、時間が掛かってもしっかりと行った上で、相手に勝てると確信が持てた段階で初めて、
「相手を上回ったことを確認、自らの勝利に向かって、ここで一気に勝負をつけに行く。」
と言う行動様式を示して来ます。
従って、こうした中国人のしたたかさを知る私は、個人の世界でではなく、ビジネスの世界に於いては、
「決して、中国人を油断してはいけない。」
と考えています。
そして、今の中国本土は、国際社会で見ると、既に、こうしたステージの終盤に入り、
「自らよりも弱いと見る相手を上手に飲み込みつつ、ライバルのライバルをも味方につけて、ライバルとの対等な関係を構築しようとする段階」
にまで来ているのではないかと、私は考えています。
 こうした中国本土と如何に付き合っていくのか、中国本土の周辺国であるが、政治軍事外交的には、相対的には米国に近い日本の悩みは暫く続きそうです。

引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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