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2017年1月[Sanada発 現場から]


現行の世界秩序の変化の可能性


はじめに

 混沌が深まる中、これまでは、
「まさかそんなことが起こるはずない。」
と思えることであっても、突然にそれが顕在化する事態が見られるようになってきています。
そして、私たちはそれを、単に、
「想定外の事態となった。」
と言っていられるような状態でもなくなってきている、即ち、現行の秩序の変化が顕在化しつつあるとも考えられます。
そこで、今回は、現行の世界秩序の変化の可能性について、考えてみたいと思います。

国際刑事裁判所の脱退の動きと世界秩序の変化の可能性

 筆者は最近世界全体で起こっている現象として、
「格差、特に貧富の格差を背景として、世界には現状に対する不満が強まっており、変革を求める気運が強まっている。」
と見ています。
しかし、現行の秩序を守ろうとする勢力、特に現行の秩序を守ることによって既得権益を守りやすいと判断する勢力は、これら、変革を求める声には反発、むしろ、現行の秩序を守ることが然るべき姿勢と主張し、
「法令遵守」
を旗頭にして、変革を求める勢力を事実上、封じ込めるような動きを示す場合もあり、こうした状況下にあって、多くの一般的庶民には、えも言われぬような、
「閉塞感」
が漂い始めていると筆者には感じられます。
更に、こうした情勢下、覇権を意識する国家のリーダーの中で現行の覇権国家に対して、
「挑戦状」
を叩きつけ始めている国も見られるようになってきたと筆者は見ています。
2014年6月に、
「米国を除くアジアの国々でアジアの新しい秩序を作りたい。」
と宣言した中国本土の習近平国家主席などはその典型的な例とも言え、今や、
「第二次世界大戦後の米国を中心とした世界秩序に対して、変革を求める気運か強まってきている。」
とも考えられるのであります。
そして、実際に世界では、例えば、
「現行の世界秩序を司る一つの組織である“国際司法裁判所”の威信」
に対する疑問を投げかける勢力も出てきており、この国際司法裁判所の判決を事実上無視する中国本土や国際司法裁判所の組織から脱退する意向を示す国も出始めています。
国際金融の世界ではまた、
「国際通貨基金や世界銀行グループの威信とその動き」
に対して疑問符を投げる組織や国も出始めており、こうした間隙を縫って、中国本土は中国本土が主導するAIIBやBRICS Bankを設立、更には、通貨・人民元のSDR構成通貨入りを成し遂げてしまいました。
筆者にはこうした点から見ても、
「第二次世界大戦後の米国、これを影から支える英国を中心とする世界秩序」
は崩れつつあると見ています。
更にはこうした状況に加えて、
☆スコットランドに見られるような国家そのものの枠組みを変えるような動き
☆ISやアルカイダのように、とにかく、現行の世界秩序を壊そうとする勢力の動き
も加わり、
「世界的な混沌は更に深まるのではないか?」
と危惧しております。
そして最近では、集団虐殺や人道に対する罪などに問われた個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)からの脱退や加盟を取りやめる動きまでもが相次いでいます。
この10月にはアフリカの3か国が既に脱退を表明し、11月半ばにはロシアが加盟手続きを中止しています。
このような、現行の世界秩序を支える国際機関からの「脱退ドミノ」が続けば混乱は増すでありましょうし、その先陣を切ってICCの信頼性が低下し、国際的な「法の支配」が弱まっていけば、
「現行の世界秩序」
は本格的に崩れ始めかねません。
AP通信は、ロシア政府はICCを「一方的で非効率」と批判し、「国益」に基づき加盟を取りやめると発表しており、ICCが予備報告書で、これを、ロシアによる2014年のウクライナ南部クリミア併合を「武力紛争」と認定したことへの反発と見てはいますが、何れにしても、こうした世界的な秩序に対する不満が顕在化してくる可能性は強まっているように筆者には感じられてなりません。
小欲を捨て、大義を以って、世界のリーダーが良き形での、
「秩序の再編」
を行わないと世界は本当に混乱に陥った後、
「無政府状態」
にもなりかねません。
今、私たち庶民がしっかりとしないと大国のリーダーの小欲によって世界は戦争にも巻き込まれてしまうかもしれないと意識しつつ、私たち庶民自身が頑張る時期であると筆者は考えています。

現行の世界に潜む不安

 筆者は、
「現行の世界秩序が変化する可能性が高まっている。」
と感じています。
 言葉を変えて言えば、
「格差を背景として、現行の世界秩序に対する限界を感じ、変革を求める人々が増えてきつつある。」
とも言えます。
 こうした現行の世界秩序を変える背景には、

  • 米中に代表される覇権争いの激化
  • 国家そのものの枠組みの変化の可能性
  • 現行の世界秩序そのものの破壊を目的とする活動を行っている過激派の動き

と言ったものがあると考えており、また視点を変えて、その背景を挙げれば、

  • 保護主義的な動きの拡大
  • 大衆迎合的な動きの拡大
  • 統制国家的な動きの拡大

と言ったものが挙げられましょう。
そして、こうした中、筆者が危惧していることは、
「欧州の秩序の崩壊懸念」
であります。
英国の欧州連合(EU)離脱問題を筆頭に、保守派が勝ったもののオーストリアの政情不安、イタリアのレンツィ首相の退陣による政情不安、オランダやフランスに見られる政情不安拡大の可能性、スペインのカタルニア地方やバスク地方に見られる独立の動きなどを見ていると、
「欧州の現行の秩序の根幹にある欧州連合体制が崩壊する可能性を高めている。」
と言う点を出発点として、
「EU崩壊の可能性⇒EUが発行している通貨・ユーロの信用力低下⇒ユーロ建て債券・国債の価値低下⇒ユーロ建て債券・国債保有者の資産内容悪化の可能性拡大⇒そのユーロ建て債券・国債保有者の中核たる欧州系金融機関の資産内容悪化懸念拡大⇒欧州系金融機関の投融資活動の鈍化懸念拡大⇒欧州全体の資金繰り悪化懸念拡大⇒欧州の景気鈍化懸念拡大⇒欧州株の下げ圧力継続⇒日米先進国株の下げ圧力復活⇒先進国経済の悪化懸念」
と言った論理展開がなされ、
「景気先行きに期待感が持てず、閉塞感が漂う中、現行の秩序に対する不満や不安が拡大している。」
とも見られるのであります。
果たして、こうした現行の世界秩序の変化の可能性が中、日本経済は欧州に見られる「下げ圧力」を払拭して、拡大傾向に転じるのか否か、注目したいと思います。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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