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2018年2月[Sanada発 現場から]


私見 ドイツとフランスを眺める


今回はドイツとフランスの様子を概観してみたいと思います。
国際情勢に大きな影響を与えるかもしれない、
「欧州情勢」
の要となるドイツとフランスの両国の状況について、
「ドイツは国内政治の視点から、」
そして、
「フランスは中国本土との関係から」
眺めてみたいと考えました。
少しでも、お役に立てば幸いです。

[ドイツ情勢と世界について]
私は今年の最大リスクの一つとして、
「ドイツの政局不安」
から連鎖する、
「独仏連携であるメルケロン体制の揺らぎ」
と、これを起因として起こる、
「EU体制の崩壊リスク」
が気に掛かっており、もしそれが顕在化すると、その結果、
「欧州経済の悪化の可能性が高まる。」
ことが懸念され、具体的には、
「欧州株価の下落」
とそれに伴う、
「先進国株の連鎖下落」
更には、
「先進国株の同時下落」
によって、
「世界経済に一気に暗雲が広がる。」
と言う可能性があるという事を懸念しています。
「EU崩壊」
のリスクさえ顕在化しなければ、こうした私のつまらぬ見方などは、
「杞憂」
に終わり、後には、
「あー、なんとつまらぬことに心配したのであろうか?」
と思うのでありましょうが、どうしても、今は、
「ドイツの政局展開」
に注目せざるを得ません。
いや、それほど、
「まさかドイツの政局が?」
「何故、すんなりとドイツでは連立政権が成立しないのか?」
と疑問に思うからであります。
ドイツの政治家たちが、冷静に考えれば、
「小事を捨て、大局を見つめるべき」
であることは自明の理であり、政治家としての思惑はあっても、これまでに、すんなりと連立政権が樹立していれば、今の時期には、
「EU体制は大丈夫である。
従って、欧州経済に不安はない。
よって、2018年の欧州経済も先進国経済も堅調に推移し、日本経済には更に明るい兆しが見えてくる。」
と言えたものと思いますが、ドイツの連立政権樹立は年を越してしまい、一月の半ばを過ぎても最終決着はついていません。
即ち、先月20日にドイツのメルケル首相と第2党の社会民主党(SPD)のシュルツ党首が会談し、今後の政権協議の日程を決めたわけですが、政策のおおまかな方向性を話し合う予備交渉はこの年初から始め、本格交渉の開始は1月下旬以降にずれこみました。
これによって、ドイツで総選挙後に正式な政権が存在しない期間は戦後最長となっており、この政治的空白は世界の不安を拡大しています。
メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)とSPDとの予備交渉はすでに行われ、メルケル首相と話し合ったSPDは連立に向けて動き始めようとはしています。
しかし、SPD、シュルツ党首がこれほど、連立政権樹立を慎重に考えてきた背景には、やはり、ドイツ国民の、テロに対する不安の高まりに基づく、
「ドイツ版自国第一主義」
がじわじわと一般市民の間に拡大していることにあり、それをベースに政権運営の主導権獲得に色気を見せるシュルツ党首、SPDの野心も見え隠れしていることが考えられます。
何れにしても、ドイツの連立政権樹立の動きと例え連立が適ったとしてもメルケル首相の求心力低下の可能性は、欧州経済全体に、そして世界経済にも影響を与える可能性があることから、当面は大いに注目しなくてはならないイシューとなりました。

尚、こうした中、実際にメルケル首相は、新年に向けた恒例のテレビ演説の中で、
「世界は待ってくれない。
ドイツが今後10年、15年と成長していく条件を作る為、迅速に行動しなければならない。」
と述べた上で、新政権樹立に注力する決意を示している点、そしてEUの基盤強化を図ろうとして、その決意を内外に示している点を私は心強く見ています。

[中仏関係]
さて、上述したドイツとパートナーシップを持ち、EU確立に大きな役割を果たしているフランスは、国際社会で影響力を強めている中国本土との関係強化を図ってくる可能性があります。

先ず、私は、
「中国本土政府は中長期的戦略の下、

  • AIIBと一帯一路政策をセット化して展開、
  • 海外から資金を集め、その資金を一帯一路のルートにある国々に投融資し、それをもって、中国本土企業が展開するインフラ開発案件を受け入れさせ、あるいは中国本土の消費財を購入させる。
  • そして、こうして一帯一路のルートにある国々にばら撒いた資金を再び中国本土に戻し、利益を得ると言う仕組みを本格的に遂行し始めている。」

と見ています。
そして、こうした交易が拡大する一方、経済力のついた中国本土の富裕層を対象にして、一帯一路の終着駅に近い、所謂、西欧先進国からは、
「価格は高くても品質の良い、中国本土ではとても購入できないような品々」
を輸入するビジネスモデルを確立、即ち、中国本土が、
「西欧先進国の顧客となって」
これら西欧先進国との関係強化を図るという、
「したたかであり、合理的な」
経済外交戦略を推進していると見ています。
そして、そうした中国本土に対しては、既に、
「ドイツ」
がより深い関係強化に向かった動きを示していると共に、BREXITを控えた、
「英国」
も一帯一路戦略の終着駅国として、中国本土との関係強化に舵を切っていると私は考えています。
こうした中、最近では、そもそも、中国本土との関係が相対的には太いフランスが改めて、中国本土との関係拡大に向かって動き始めていると思われます。
即ち、中国本土を本年年初に訪問したフランスのマクロン大統領は、中国本土の習近平国家主席と、北京の人民大会堂で会談、その会談後の共同記者発表では、中国本土の習国家主席が、
「中国本土が主導する経済圏構想である“一帯一路”政策へのフランスの積極的な参加を歓迎する。」
と述べ、中仏の協力関係を更に深めていく意向を示しました。
これに対して、フランスのマクロン大統領も、この中国本土が主導している一帯一路政策について、
「フランスとしても、中国本土と共に取り組んでいく意思を習国家主席に伝えた。」
と述べ、参加する意向を表明しています。
私の認識では、フランスは、元々は中国本土に近い国と見られていますが、この一帯一路政策については、これまでは、中国本土の覇権主義的な動きとして警戒感を示していきました。
しかし、上述したようにドイツや英国も中国本土寄りの姿勢を示す中、ここにきて、フランスとしてもその経済的メリットなどを追求すべく、中国本土寄りに立場を転換してくるものと思われます。
そして、マクロン大統領は、
「私たちには自由や普遍的な権利についての違いがあり、そのことへの懸念を習国家主席に示した。」
と述べ、大国・フランスの威信を示し、中仏両国の間にある民主主義の価値観の隔たりがあることを改めて言及しましたが、しかしながら、やはり背に腹は変えられぬとばかりに、中国本土との関係強化に向かって動いていく姿勢を示したのであります。
このように、世界の主要国を飲み込み始めて拡大する中国本土の動きを今後も注目したいと思います。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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