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2018年3月[Sanada発 現場から]


最近の国際金融市場混乱と米国


[最近の国際金融市場混乱の背景]
先日、先進国金融市場に不安が走りました。
米国国債の価格変動により米国長期金利の上昇が見られ、米国株価が下落、ドミノ倒しのように日本株も下落しました。
米国発の、取り敢えずは、「一時的な」金融混乱ですね。
この点について、私は以下のような見方をしています。
時々このレポートでもお話ししていますが、世界には、
「借金をさせて購買意欲を拡大させ、需要を作り、経済を膨らませたことによって、バブル、即ち、極端な資金余剰の状況にある。」
と言えます。
こうして、世界の実体経済規模を大きく上回る資金が世界の金融市場には溢れ出ている、しかし、お金に色目はないので、こうして余剰資金を手にした投資家は、その資金運用に動く、しかし、実体経済には既に十分に資金は供給されているので、こうした余剰資金は、相対的にリスクリターンの良い投資案件に向かう、そして、昨今の情勢の中では、先進国の株式市場にこうした余剰資金が流れ込み、高値の推移を見せていた、しかし、バブル感を伴うこうした株価上昇は、
「ファンダメンタルズにしっかりと裏打ちされたものではない。」
為、何かあると、蜘蛛の子を散らすように一気に逃げてしまう、つまり、そうした動きが、所謂、
「一旦の利益確保」
として見られ、株価は下落する、その証拠に、今回の米国の株価下落は、大きなファンダメンタルズの変化によって起こったものではなく、
「米国の長期金利、即ち、米国債の評価の下落」
によって起こったものであります。
問題は、この米国債の下落の背景にあり、私は、巷の皆様とは異なり、
1.先ずは大連立が予想を大幅に遅れているドイツの政治情勢、そしてメルケル首相の求心力低下とその延長線上にある独仏連携に基づくEU体制の維持にヒビが入るのではないかとの不安の急激な拡大
と、
2.昨今の米中の政治のみならず、軍事筋の動きが不穏であり、平昌五輪以降の事態に万一のことが起こるかもしれないというえも知れぬ不安の拡大
3.米国経済の過熱感の拡大
などが合わせ技となり、米国の動きに対する不安が募り、米国債売り、結果として米国株価の下落に繋がっていると見るのであります。
ここでもう二点、追加で申し上げておきたいことがあります。
1.朝鮮半島情勢などに関連して申し上げると、軍人は私たち軍人以外の文民の裏をかくことによって勝利の可能性をより高くする人々であることを我々は忘れてはいけない、即ち、皆が油断をしているときに行動を起こすことが勝利には近く、そうした意味で、北朝鮮情勢についても、我々は一応注意を払い続ける必要がある。
2.金融市場のプレーヤー達は極めて慎重な人々であり、我々一般人よりもリスクには神経質である。よって、欧州や北朝鮮情勢に関して、我々一般人以上に情報を持ち、その上で、リスク対比リターンの分析、判断をしている。
ということであります。
そして、上述したような利益確保の後、予想したリスクが顕在化しなければ、再び、市場に資金を戻す、予想通りであれば、別の、相対的にリスクリターンの良いところに資金を移動させるという動きを取るものと思います。
果たして、今回はどちらとなりましょうか?

また、もう一度、申し上げますが、
「米国には、借金をして消費をし、経済規模の維持拡大を図る傾向が強い。」
と見ていることをベースとして、最近では、
「米国政府自身が、更に借金を拡大し、財政出動を拡大する傾向を強めている。」
とも見ています。
そして、
「バブル経済、即ち、実体経済を上回る資金の市場への流出を生み、この余剰資金が金融市場の不確定要因となり得る。」
とも見ています。
こうした中、更に問題となる点は、
「米ドルが基軸通貨であるが故に、こうした余剰資金が世界に流出してしまい、先進国を中心とした世界的バブルを生む。」
と言う点であります。
そして最近、私が特に気にしている点は、米国人が再び、借金を拡大して消費をする傾向を強め、米国人の借金を背景とした過剰消費によって、米国の貿易収支もより拡大してしまう、その結果、これが今後、更に米ドル安(円高やウォン高、一部東南アジア通貨高など)を誘引していく可能性もあるのではないかという点であります。
これに加えて、トランプ政権の貿易圧力が強まれば強まるほど、米ドル安が選好されるのではないかとの見方が為替市場には生まれ、更なる米ドル安も助長される可能性もあるかもしれません。
今後の動向をフォローしたいと思います。

[トランプ政権と米国経済]
一方、米国そのものについても気になります。
米国のトランプ大統領の政権運営に対しては、様々な指摘、そして、評価がなされています。
そうした中、私は、トランプ大統領、トランプ政権の経済政策は一定の戦略を持って運営されていると見ています。
即ち、私が最も意識している点としては、トランプ大統領は、政権運営の公約として掲げている、
「自国第一主義」
をベースに、
「米国経済を強くし、米国国民の雇用機会をしっかりと守ることを念頭に、
(1)宇宙航空産業を前面に出した防衛産業の育成に腐心、トランプ大統領自らは昨年11月のアジア歴訪などの機会を捉えて、米国のか防衛装備の販路拡大を進めるなどの具体的効果的戦略を推進している。
(2)IOT社会を意識しつつ、米国産AIの自動車をはじめとする様々な製品への設置を推進し、米国産AIのグローバル・スタンダード化を進め、IOT社会での主導権を握りつつ、その生産拡大に伴う雇用機会の創出を図る。
(3)実体経済分野を左右する生産者と消費者を結ぶグローバル物流での主導権を握り、そこに雇用機会の確保を託す。
と言った戦略に出ており、一定の効果を上げてきている。」
と見られ、更にこうした状況を支えるかのように、
「株価上昇による資産バブルが米国企業並びに米国市民の投資や消費を支える原動力となり、経済成長を促している。」
ことから、米国の経済情勢見通しは比較的明るいものとなっており、
「2018年は通年で少なくとも昨年同様、或いは昨年より若干、米国の経済成長率は相対的には高くなる。」
との見方が多く、また、税制改革に伴う景気刺激なども加わり、2.3%程度の経済成長は固いとの見方が出ており、更にまた、今後も米国株は堅調に推移するとの見方が強い。」
となっています。
もちろん、トランプ大統領自らの政治的失策、暗殺リスクといったものは否定出来ず、また、国際情勢の突然の悪化に伴う米国経済の悪化リスクも残り、保護主義的動きによる外需面での悪化懸念等々の水面下のリスクが存在していることは否めません。
即ち、

  1. 税制改革のうち、特に法人税率の引き下げが企業収益に与える影響は決して小さくないとみられ、また、GDPを押し上げる効果は限定的に留まると見込まれる。
  2. 中間選挙に向けたアピール材料としての、大きな経済効果が見込まれる政策が追加的に打ち出される可能性は低い。
  3. 米国の国力低下を背景に、マルチラテラル・ネゴシエーションでは不利となることからバイラテラル・ネゴシエーションへと経済外交姿勢の転換を図り、メキシコとの激しい攻防をしつつ北米自由貿易協定(NAFTA)の交渉を進めているが、この進展状況による悪影響も懸念される。

と言ったことなども想定され、油断をして、米国経済の情勢認識を甘めにし過ぎることもなきようにしないといけません。
そして、2018年の米国経済を、厳しく慎重に見、どの程度の経済成長が達成されるのか等々を意識した上で、具体的経済政策の推進をしていくことが、今の日本には不可欠と考えています。
米国の動向についても、引き続き、フォローしたいと思います。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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