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2018年8月[Sanada発 現場から]


米国の外交政策姿勢


[はじめに]
 今月は、米国の対韓外交姿勢と対イラン外交姿勢について、コメントしたいと思います。
 米国のトランプ大統領の外交政策は、思いつきで動いているとの見方もありますが、しっかりとした論理によって、展開されているようにも窺えます。
 また、現在は、同盟国・イスラエルの意向も受け、トランプ大統領は、
「イラン」
に照準を合わせた外交戦略を展開しているとも見られます。
 以下を、ご覧下さい。

[在韓米軍撤退問題]
香港の主要紙の一つである「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」(SCMP)は、
「在韓米軍が撤退すれば中国本土が最大の被害者になりかねない。」
と指摘するコラムを掲載しています。
米国のトランプ大統領が在韓米軍撤退の可能性に言及したことを中国本土は歓迎していますが、在韓米軍撤退は北東アジアの核戦争を招き、中国本土にとっては、かえって打撃になる可能性があるというものであります。
このコラムの執筆者たるマイケル・ホン元シンガポール南洋理工大教授は、
「北東アジアの覇権を狙う中国本土は、在韓米軍の撤退を望んでいるが、これは在韓米軍が中国本土に与えていた二つの大きな恩恵を見過ごしている。
米軍の駐屯によって、日本は平和憲法を順守して再武装を諦める結果となり、中国本土から台湾に逃げて以降核兵器開発を望んでいた蒋介石も、開発を諦めざるを得なかった。
しかし、在韓米軍の撤退によって北東アジアの安全保障が不安定になれば、日本は核兵器開発に乗り出す可能性があり、中国本土の脅威に直面している台湾も自らの生き残りのために核兵器を開発する可能性がある。」
と分析しています。
また、
「仮に北朝鮮が非核化のまねごとだけをして、実際の非核化の約束を守らなかった場合、中国本土は目と鼻の先に核兵器の脅威があるという状況になる。
浮き沈みの多い中朝関係を考えると、北朝鮮の核も中国本土にとっては脅威になり得る。」
との見方も示されています。
これに対して、私は、
(1)日本の核武装化があるとすれば、それは米国、米軍の傘下で実施されるものであり、日本にとっての防衛面での自立とはならないが、米国は事実上、日本を東アジアの安全保障の橋頭堡にする。
(2)台湾の核武装化については、台湾の国民党が米国寄りなのか、中国本土寄りなのかがここのところはっきりせず、米国はこの点を確認しつつ、核武装化を容認するか否か決めることとなろう。
台湾が、こうした米国の意向にそぐわない形で核武装化しようとすると、一旦は、米台関係は悪化、中国本土も台湾の核武装化には即時容認するとは思えず、台湾の立ち位置は悪化する。
(3)北朝鮮が中国本土の脅威となることは十分にあり得る。
北朝鮮、否、金ファミリー帝国が最も信頼する国はロシアであり、中国本土とはDeal by Deal, Case by Caseの外交関係にあるからである。
と見ています。
いずれにしても、
「在韓米軍の撤退」
がどうなるのか、今後も注視したいと思います。

[米国の対イラン政策、そして、米欧関係]
私は、米国のトランプ政権は、最大の緊密国であるイスラエルの意向を尊重し、
「対イラン圧力強化」
を最優先し、例えば、北朝鮮との間も、一旦、
「和睦」
に導き、
「イラン包囲網」
を強化する方向にあると見ています。
そして、米国政府は、例えば、イラン制裁が緩んだ際にイランとのビジネス関係を拡大しようとしていたドイツ企業に対して、
「イランとの取引を拡大するのであれば、米国として圧力を加える。」
ことを示唆し、イラン包囲網の強化に向けた動きを既に取り始めています。
トランプ政権はそれほど、
「イラン包囲網の強化」
に力を入れていると見ておくべきでありましょう。
さて、そのトランプ政権にとって、イラン包囲網を成功に導く道の一つとして、NATOの有効利用があると考えます。
これまで、加盟国にとって、NATO首脳会議というものは儀礼的なものとなっており、加盟国が一堂に会し、同盟の強固なることを宣言し、
「安全保障について、今後とも、相互に団結して行くこと。」
を誓い合うものであったはずです。
しかし、米国がトランプ時代になり、NATOは、

  1. 不安を煽るが如き相互対決(confrontations)の場

  2. なんとかして長期にわたるダメージが起きることなき様にと努力する場

となって来ているとニューヨークタイムスなどはコメントしています。
特に、今のNATO首脳会議は、ヨーロッパの加盟国たちにとっては、
「ロシアの脅威が一段と高まっていることに対する対応策を探る重要な首脳会議である。」
との認識を持っていると思われますが、トランプ大統領は、特にドイツに対して、
「ドイツの防衛支出は、約束のGDP対比2%に達していない。
米国は、ヨーロッパに食いモノにされている。
こんな状況は、不公正であり、米国は受け入れがたい。
ドイツをはじめ、ヨーロッパ諸国は、もっと防衛費を増やすべきである。
いつまでも米国を頼るのはやめてほしい。」
と批判しており、議論の焦点がかみ合っていません。
ある意味では、今やトランプ大統領は、NATO加盟国間に不協和音を巻き起こしている、とも言え、こうした見方をする者は、
「トランプ大統領の言動により、プーチンの思う壺になる。」
との見方までしています。
そして、上述したように、トランプ大統領は、とりわけドイツに対し、特別な敵意を抱いているとも見られ、
「ドイツは、活気溢れる社会システムを発展させ、輸出によって経済は、不当に繁栄させ、その一方で、米国の力を借りるばかりで、防衛費は少ない。
いいとこ取りをする国家運営は中国本土にも似ている。」
と強烈に批判、これにより、ドイツからは、
「2024年迄に防衛支出をGDPの1.5%迄高める。」
との約束を取り付けています。
そして、トランプ大統領は、
「米国産品をもっと買えと。」
といった圧力も加えており、こうした揺さぶりを掛けつつ、NATO諸国の一部にある、
「イラン包囲網の強化」
に対する反対の声を押さえ込もうともしていると見られます。
そして、前述したように、NATO諸国の一般的関心事である、
「ロシアの脅威に対する対応姿勢」
に関しては、トランプ大統領は、去る6月には、
「ロシアをG7に復帰させよう。」
と言い出し、
「対イラン制裁については協力やぶさかではない。」
と言うプーチン大統領との意思を意識しつつ、
「ロシアと米国はうまくやって行くべきである。」
とのスタンスも示唆しているのであります。
こうしたトランプ大統領のプーチン大統領に対するスタンスを見て、米国の保守系の多くの論者は不安に感じているようでありますが、トランプ大統領閣下は全く意に介していないようでもあります。
そして、NATO諸国の間には、
「米国をどこまで信頼して良いか分からない。」
と言った声まで出ているようですが、これにもトランプ大統領閣下は全く気にしていないようであります。
米国と欧州関係はどうなるのか、今後も注意を払わなければならないと思います。

 

引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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