SAITAMAビジネスライン 埼玉産業人クラブ
埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰
ホーム    サイトマップ    当クラブについて   
現在位置:ホーム >Sanada発 現場から サイト内検索
 

2019年11月[Sanada発 現場から]


複雑な中東情勢、そして日本の国土強靭化策


[はじめに]
 米国のトランプ大統領の登場により、世界は混迷の度を深めていると私は感じています。
 そして、トランプ大統領が中東地域からの米軍の撤収姿勢を強める中、更に世界情勢は混沌としてきているかと思います。
 今回はそうした中東情勢を概観した上で、日本の強靭化策について、少し考えてみたいと思います。

[複雑な中東情勢]
シリア内戦とトルコ情勢、そして、イランの核問題と米軍の中東地域からの撤退は一連の関係を持つ出来事であり、複雑な中東情勢の根源の一つかと思います。
もちろん、イスラエルとイスラム諸国との対立や、サウジアラビアとイランの確執、イエメン問題なども中東情勢を複雑にしている重要な背景かと思いますが、今日は、上述した点に焦点を充て、眺めてみたいと思います。

先ず、シリア内戦ですが、この問題だけを見ても、複雑であり、単純明快な答えなど簡単に見つけられるものではないと思われ、
「それが、シリア内戦と言うものであり、終わりを知らぬ戦いなのである。」
などとドイツ紙などでは表現をされています。
そして先ず、シリアのアサド大統領を軍事的に支援するイランとロシアが、アサド大統領の運命を握っていると見ておくべきであるというのが基本的な見方にあります。
現在、トルコとの国境近く、シリア北西部のイドリブ県に、そのアサド大統領率いる政府軍によって追い込まれたイスラム過激派が、アサド軍に対して最後の戦いを挑んでいますが、イランとロシアのアサド支援が変わらなければ、イスラム過激派は、アサド政府軍により壊滅される可能性は高いと見られています。
一方、シリア北西部にいるクルド人部隊も、いずれ、アサド大統領率いる政府軍の支配下に入れられるか、或いは、クルドをテロ組織と見做すトルコ政府軍の直近の軍事展開によって殲滅されるであろうと見られています。
更に、シリア国内で情勢不安定なのは、なにもイドリブ県だけではなく、他地域でも、混乱は激しく、やはり、ドイツ紙は、
「嫌がらせ、迫害、拷問」
などが頻繁に見られ、市民の社会生活は保たれず、平和どころではないとも報道されています。

そして、今日の中東情勢の混乱の遠因を眺めて見ると
1.2011年、リビアの独裁者カダフィを殺害によるアラブの春の拡大と結果的な混乱の拡大
2.2014年、ウクライナへのロシアの侵攻(この際には、EUもNATOも、米国もウクライナ支援が叶わなかった。)
などが挙げられていますが、欧州では、こうした失敗を考えれば、
「シリアのアサド政権は倒す必要がある。
何故ならアサドは、西側に属せず、また中東地域における米国の経済的利益にも抗する存在であるからである。」
との声が出てきています。
そして、古くは、2003年、米軍のイラク侵攻時、ブッシュ大統領は、シリア政府を名指しして、
「アサド政権は、テロリストを支援している」
としてシリアを批判したことも、今更ながら思い出されます。

こうした中、欧米諸国による中東天然ガス用パイプライン建設計画(カタールからサウジ、ヨルダン、シリア経由、トルコへ、そして、パイプラインで欧州に天然ガスを輸送するパイプラインの建設計画)を考える上からも、シリアのアサド政権が邪魔な存在であります。
しかし、こうしたパイプライン建設は、ロシアやイランの利益やその両国の欧州に対するに影響力の低下に繋がることは必至で、だからこそ、ロシアとイランは、アサド支援をより強化している、アサド支援の大きな背景とも言えます。
こうしたことから、先ず、シリア内戦だけを見ても複雑骨折していることが分かります。

さて、こうして、シリア内戦問題一つとっても、中東地域と隣接する欧州にとっては頭痛の種でありますが、更に、欧州と中東、そしてアジアを繋ぐ架け橋であり、米国にとっても、中東軍事展開の一つの拠点となってきたトルコを率いるエルドアン大統領が、最近では、
「EUを脅迫しにかかって来ている。」
との見方がではじめています。
即ち、2011年シリア内戦が始まって以来、トルコ政府は、シリアから国境を越えトルコ国内に逃げ込んで来たシリア難民、数にして3,6百万人を受け入れていますが、シリア難民受け入れは、トルコにとっては、住宅不足、雇用など、様々な問題を引き起こしているとエルドアン大統領は主張した上で、EUに対して、
「我々トルコはこれまで、シリア難民をヨーロッパに行かせない様、必死に努力しているが、EUは、我々にもっと資金支援せよ!
そうしないと、今後、シリア難民がヨーロッパに流れることになっても、トルコは責任を持たぬ!」
との主張を始め、EUに対して資金供出を露骨に促し始めています。
EUは、2016年3月に、そのトルコ政府との間で、難民問題に関する合意を締結し、
「小さなゴムボートで地中海を渡りギリシャに辿り着くシリア難民をトルコ政府は責任をもってトルコへ引き戻させるが、その代償としてEUは、トルコ政府に、数年間で60億ユーロを支払う。」
と約束しました。
しかし、エルドアン大統領は、
「トルコ政府はシリア難民をトルコ国内に居住させる為、既に約360億ユーロの費用を掛けているにも拘らず、EUはこれまでトルコに対して、僅か30億ユーロしか払っていない!」
と主張しています。
エルドアン大統領からのこうした抗議に対してEUは、
「いや、EUはトルコに対して約束通りコストを支払っている。
むしろ、その合意にも拘わらず、今もって、多くのシリア難民が、トルコ経由でヨーロッパに流れ込み、欧州社会の混乱の火種となっている。」
と反論し、中東情勢は今、こうした、トルコとEUの対立の影響も受け始めています。

そして、米国のトランプ政権が、中東情勢の混乱は、中東地域に軍隊を派遣し武器を供与しているイランの現指導部がいる限り収拾できないと認識、そのイランの現指導部壊滅を目指していると見られますが、対するイラン政府は、
「ヨーロッパ諸国との間の核合意維持のため、ヨーロッパから約150億米ドルの金融支援をお願いしたい。」
と欧州と米国のイラン核問題に関する認識のギャップをつき、欧州におねだりをしています。
即ち、イラン核合意継続を巡って、イラン政府と米欧諸国との綱引きが続いている中、イラン政府は、欧州諸国に対して、150億米ドルの金融支援を要求し、
「これが得られた場合のみイラン政府は、欧州諸国との更なる核交渉に応じる用意ある。」とコメント、米国のイランに対する圧力をむしろ利用する形で、地政学的に見て、イランとの核合意維持を図りたい欧州を相手に資金支援を要求してきているのであります。
更に、イランのローハニ大統領は、
「イラン政府は、核合意の条件を遵守していく用意があるが、但し、これには条件があり、米国が我が国に対する制裁を解除することである。」
とも言明しています。
これに対して、米国のトランプ政権は、対イラン制裁解除を拒否していることはご高承の通りであります。
トランプ大統領は2018年に、イランとの核合意を、一方的に破棄し、より厳しい条件での核合意をイラン政府に要求しましたが、これに対してイランの現指導部は、当然にこのトランプ大統領の要求を全て拒否した上で、
「ウラン濃縮度を米欧との合意以上に引き上げ、ホルムズ海峡における船舶の運航を妨害するなどして、欧米諸国に対抗し続けている。」
との認識がなされています。
こうした中、英独仏三か国は、
「イラン政府に対する米国のやり方、イランとの核合意の一方的破棄などは、間違っている。」
とし、他のEU諸国、そして、中国本土やロシアともこの問題では連携して、
「イランとの核合意を今の状態で維持したい。」
と考えているものと見られ、その為にも、
「イラン政府が経済的に不利益な状態に追い込むことは避けるべきである。」
と考え、例えば、フランスのマクロン大統領は、先のG7から、イラン政府との間での新しい外交的話し合いをスタートさせ、欧米諸国とイランとの間での歩み寄りを図り始めています。

中東情勢は正に複雑骨折をしているような状態にあると見られます。

[日本の国土強靭化のあり方 そして、シンポジウムのご案内]
 私は、
「日本は、先進国であるが故、人々に必要な消費財は行き渡っている。
 日本は、先進国であるが故、社会インフラも整っている。
 従って、新しいものを購入したい、新しい社会インフラを建設しなければならないと言う基礎的な需要が弱い。
 需要が弱いから、なかなか売れない、社会インフラ開発が起こらず、結果、売上高の伸びは弱く、日本は安定成長と言う名の低成長になるのはある意味では必然である。」
と考えてきました。
 しかし、昨今の自然災害の様子を見ていると、
「日本の社会インフラは本当に充実しているのか?」
と言う点に疑問を持たざるを得ません。
 直近で見れば、台風15号が齎した首都圏の災害、つまり、千葉県に齎した災害を見れば、一目瞭然かと思います。
千葉では、災害が発生してから数週間経っても、
「観光地の再生はまだ先だ!」
などと叫ばれ、台風15号の影響で大規模な被害の内実をみると、東京電力ホールディングスは、修理に急ぐものの、
「完全復旧にはまだ時間がかかるとみられ、房総半島のホテルなどでは不安の声がある。
 南房総市のホテル関係者は、周辺の観光施設は閉鎖中で、市内にはがれきの山が残っており、温泉設備は台風で故障し、食材も十分に入手できていない、よって、まだ観光客に喜んでもらえる状況ではない。」
という状態が続いているとの報道が見られています。
10月中旬の営業再開を目指す館山市のホテルでは、割れたガラスや屋根などの修繕作業が続くが、宿泊の問い合わせも増えており、
「時間はかかったが、客足が少しずつ戻るのではないか。」
と期待を寄せていますが、復旧には一カ月、首都・東京のお隣の県での、これが社会インフラの実態であります。
更に、房総半島南端にある医院は、
「復旧まで、一言で言うと遅い。
機器を使った検査ができず、電子カルテを見られず薬が出せないこともあった。
東電は対応を検証してほしい。」
とコメントするなど、本来、充実しているはずの日本の社会インフラが実は砂上の楼閣のように脆弱であったことを被災地の方々皆が体感しているように感じられます。
 こうした状況だからこそ、日本は今、
「真に改善しなくてはならない社会インフラが何かを国家を挙げて現状認識し、リストアップする。
 そして、それに対して優先順位を付ける。
 その際には利権を絡めた選定と優先順位つけをしてはならず、政治家の関与は排除し、中立的、客観的、専門的な人材による複数合議によって、決定する。
 その上で、限りある国家予算の中から、出来るものから順に順次、国土強靭化をしていく。
 さすれば、国富は国土強靭化の為に使われ、資金が動き、日本の長期不況からの脱却の起爆剤ともなる。」
と私は考えています。
 日本が今動くべきは、
「真の国土強靭化プロジェクトである。」
と私は思います。

 さて、私のこうした思いなどを具現化すべく、私も客員研究員とさせて戴いています、PHP研究所グループのPHP総研では、以下のようなシンポジウムを皮切りに、
「地域経済活性、日本経済再生」
の為のプログラムを立ち上げることとなりました。
 下記の12月12日の会では、私も他のお二人の方(お一方は私の大親友です。)で基調講演を行うこととなっています。
 宜しければ、是非、ご参加ください。

                       令和元年10月吉日

                  政策シンクタンクPHP総研
            「PHP公共イノベーション講座」事務局

 このたび、政策シンクタンクPHP総研は、持続的に成長し、地域
になくてはならない企業ために必要な経営戦略、その実現を支援する
国・自治体の産業政策のあり方を考える講座を開催いたします。
 本プログラムでは、国内外の投資環境の変化を概観しつつ、製造業
を中心に、中小企業に求められる「新たなビジネスモデル」、非財務
情報を活用した中小企業、地域への「新たな投資の呼び込み」、「地
域とともに歩む企業育成」の課題を考え、地域経済活性化への道筋を
探ります。
 ふるってのご参加をお待ちしております。

【開催要領】

■開催日時
  令和元年12月12日(木) 13:00〜17:00 (開場12:30)
■会場
  PHP研究所 東京本部 中ホール
  〒135-8137 江東区豊洲5-6-52 NBF豊洲キャナルフロント11階
      (東京メトロ有楽町線豊洲駅6a出口より徒歩7分)
■テーマ
  「地域とともに歩む企業の経営戦略と国・自治体の支援政策」

■本プログラムのポイント
・ マスビジネスモデルからの脱却の必要性
・ BCM格付等の非財務情報を巡る新たな投融資の動向
・ 投資を呼び込める中小企業、地域に必要な経営戦略
・ 経済価値と社会価値が両立した経営のあり方
・ 補助金、制度融資、利子補給、信用保証制度に頼らない支援政策 など

■詳細・お申し込みはこちら
 → https://thinktank.php.co.jp/innovation/5851/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<過去開催の講座>
 ・2019年10月7日(月)
  https://thinktank.php.co.jp/innovation/5784/
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

よろしくお願いいたします。

------------------------------------------------------------
(株)PHP研究所
佐々木陽一
〒135-8137 東京都江東区豊洲5−6−52
NBF豊洲キャナルフロント11階
TEL:03-3520-9612/FAX:03-3520-9653
E-mail:yo-sasaki@php.co.jp
URL:https://thinktank.php.co.jp/
公式Facebook
http://www.facebook.com/policythinktankPRI

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
コンテンツ

例会・講演会

各部会紹介

リンク


SANADA発現場から

お問い合わせ

当クラブ(地図)へのお問い合わせ、入会希望など、お気軽にお問い合わせください。

tel0438-872-2281 fax048-872-2285

Eメール
clubsaitama@sangyojin.org

お問い合わせフォーム

ホーム当クラブについて埼玉ちゃれんじ企業者表彰例会・講演会情報ファイルお問い合わせサイトマップ
NITEC埼玉産学交流会TDU産学交流会埼玉ビジネス研究会経営研究部会企業PR部会人材開発部会産友会分科会
Copyright (C) 2018 SAITAMA SANGYOJIN CLUB All rights reserved