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2020年5月[Sanada発 現場から]


新型コロナウイルス問題に関連する真田が意識しているポイント


  新型コロナウイルス問題で世界は、そして日本も混沌としています。
 そうした中、その新型コロナウイルス問題を背景として、真田が意識しているポイントを列挙させて戴きたいと思います。
 想定外の混沌となっていることから、以下の点以外にも気になることは多々ありますが、その中でも特に意識している点を申しあげます。
 ご参考になれば、幸いです。

1.       原油価格
米露の覇権争いの中で下落している。
米国・トランプ大統領は、
「世界に於けるオイル・マネーの依存度を落とし、ロシアや中東、イスラム過激派の世界に対する影響力を下げる。」
と言っており、このトランプ大統領に対するプーチン大統領の対抗意識は極めて強い。
OPECを軸とする産油国が減産をすれば、その間隙を縫ってシェールガスや米国の石油産業が本格的に世界に進出してくる危険性があると判断したロシアは減産には応じず、今は産油国全体が米露の戦いを警戒して、減産体制に応じる姿勢を示していない。
新型コロナウイルス問題で、今後も暫らく、原油需要が落ちるとの状況、予測が継続すれば、原油価格は低位定着する。
尚、原油価格の低位定着は、世界の石油関連産業に信用供与している国際的な金融機関の不良債権問題を生み、世界的な金融危機を生む火種となりかねない。

2.       香港金融市場
日本の主要企業を除くアジアの多くの主要企業のDebt Financeの場となっている香港金融市場の活動不振が続くと、これら多くの企業のRefinanceに問題が生じて、アジアの多くの企業にDefaultが生じる可能性が高まり、ひいては、国際金融市場の混乱要因となり得る。

3.       中国企業
上述した問題に加え、中国企業は、米ドル建ての短期負債を多々、抱えていることから、人民元の対米ドル安が進展している今、米ドル建て短期負債に関するDefaultが生じる危険性が更に高まっている。
そして、そうした不良債権を抱えた金融機関からその不良債権を買い取る力が中国本土政府には弱まっていることから、中国本土国内金融市場にはマネーフローにブレーキが掛かる危険性が高まっている。

4.       イタリア、イラン情勢
イタリアとイランで新型コロナウイルス問題が拡大しているのは、やはり、中国本土との関係からである。
即ち、イタリアは、古くから中国人を労働者としてイタリアに迎え入れ、また最近では多くの観光客も迎え入れている中、新型コロナウイルスがイタリアに入り込んでしまった。
こうした中、イタリアは先の財政危機で各地の診療所の閉鎖、医師の減少を行ってしまい、今回の事態に対する医療対応が遅れ、死者、感染者拡大の阻止にまでなかなか至らない状況にある。
イランは、米国をはじめとする先進国からの制裁を受けていたことから、中国本土がイランに対して、ノービザを前提にたくさんの中国人観光客をイランに送り出していた。しかし、これが裏目に出て、新型コロナウイルスがイラン国内にもたらされてしまった。もとより、医療体制が脆弱なイランでは、現在、新型コロナウイルス抑制の術がほとんどない状態にある。
尚、イランのこうした状況は、イラン同様に多くの中国人を受け入れていた、かつ、医療体制の脆弱なアフリカでの今後の感染、死亡状況の一つの目安ともなり得る。

5.       新型コロナウイルスの国際金融市場への影響
(以下は上述した部分と重なる部分もある点、ご容赦戴き度。)
新型コロナウイルスの悪影響は甚大である。
そして、筆者はその根源として、
「不信感というウイルスが世界の人々の心に伝染、蝕んでいる。」
と見ている。

言うまでもなく、我々、人間社会は、
「信用」
によって成り立っている。
しかし、疑心暗鬼が続く社会にあっては不安、不信感が先行する。
平時には、
「信用創造」
と言う手段によって経済社会は拡大する。
ところが、この10数年は、
「人々に借金をさせて消費や投資をさせる。」
という「行き過ぎた信用創造」によって、実体経済を上回る資金が市中に放出され、文字通り、
「バブル経済」
となっている。
特にこうしたバブル経済下では、実体経済に対して余剰となっている資金が投機性資金となり、これが先進国株式市場に大量に流れ込んでいる中、実体経済を背景とした、
「ファンダメンタルズ」
を基本としつつも、景気先行きに対する期待感などを中心とした、
「Market Perception」
が良いと更に、株価は押し上げられるのである。
そしてまた、金融市場が安定的に推移する中、先行き期待が高まる状況にあると、投機家は借金をして、投機元本を更に膨らませて、投機をしていくという、
「キャリートレード」
を推進していくことから、株価はぐいぐいと引き上げられていくことになる。
ところが一転、今回のような、
「不信感、不安感」
が発生すると、先ずは、借り入れをして投機をしていた株式投資に実損が出る可能性が高まることから、投機をしていた株が売られ、この結果、株価を下げながら、借金は返済されていくのである。
このように、不信感、不安感は、株売りを誘導し、負の循環は拡大してしまう。
上述した、Market Perceptionの悪化が、こうした事態を引き起こすのである。

こうした中、米国の中央銀行に当たるFRBは、金融市場に、
「安心感」
を齎そうとして、更なる利下げを行い、トランプ大統領は、日本の年間国家和算規模とほぼ等しい1兆米ドルもの対応姿勢を先ずは示したものの、国際金融市場に落ち着きは戻ってきていない。
それでもこの不信感は止まらないということである。
米国の基準金利は今回の利下げにより「のりしろ」を使い果たしてしまった。
それにも拘らず、先進国株市場の負の連鎖はいよいよ止まらず、
「急激な信用収縮」
に入ると見られ始めている。
そして、そうなると、先進国株式市場に流入していた、上述した「投機性資金」は一旦、市場からほとんど全て逃げ出す、即ち、少なくとも、リーマンショック時の水準までの株価水準に落ちる可能性が大となる。
これを、数値で示すと、
「日経平均株価は7,000円前後
米国ダウは8,000米ドル前後」
を覚悟せざるを得ない状況になってしまう。
ここまでくればもう金融危機といっても良い状況となる。

ところで、リーマンショックは、
「民間セクターの負債過多」
が引きお越した事態と言える。
そして、リーマンショックと言う金融危機を改善しようと、各国政府が財政出動を伴う景気対策を打ち、日本を含む先進国の財政は更に痛んだが、何とか、世界経済は回復した。
こうして考えると、今は、
「公的セクターの負債過多を背景としたバブル経済の状態にある。」
と考えられる。
この間の一時期、ギリシャ財政危機や欧州財政危機などのピンチもあったが、何とかその危機を乗り越えて今日に至った。
しかし、今回、新型コロナウイルによって、これが弾けると、
「公的セクター」
が本格的に、世界的に痛む訳であるから、リーマンショック以上の悪影響、例えば、回復に時間がかかる、と言った事態となることは必至である。

更に、そうなれば、国家に対する不信感が強まり、それが日本に来れば、
「比較的安心安全通貨神話」
を持つ、円までもが暴落してしまい、日本経済は、いよいよ、
「株安、国債暴落、急激な円安」
となり、日本の国家経済運営が滞る危険性が出てきてしまう。
本当に一大事である。

しかし、上述したシナリオは全て、
「不信感、不安感の連鎖」
から発生するものである。
従って、不信感、不安感の連鎖が起こらなければ、上述したような悪い事態は、
「顕在化」
しない。
更に、突き詰めて考えれば、今回の不信感、不安感の根源となる、
「新型コロナウイルス」
の封じ込めさえ出来れば、今回の危険は回避されるはずである!

だからこそ、筆者はその根源的対策となる、
「新型コロナウイルスの何たるかの科学的検証」
を行いつつ、
「ワクチンの早期開発」
と、
「その大量生産」
に一定の目途さえついてくれば、
「国際金融市場の不安も払しょくされる。」
と考えている。
しかし、これに手間取ると、最悪の金融危機にまで落ちる、また、金融危機まで至らなくとも、不安の期間が長引けば、
「国際金融市場の回復には相応の時間がかかる危険性も高まる。」
と考えている。
一方、実体経済について、考えると、上述したような新型コロナウイルスの封じ込めに成功しさえすれば、マスクもトイレットペーパーなども心配しなくてよくなる。
まして、検査キットの開発はいらなくなる、そして、金融の問題が長引いていなければ、不安が払しょくされ、
「ひと、もの、かね」
が動き出し、実体経済の回復は思ったよりも早くなる可能性は十分にあると筆者は見ている。
そして一言、新型コロナウイルスの問題を政治利用することは言語道断!である。

 尚、筆者が認識しているところでは、中国本土は今、
「ワクチンの早期開発」
に全力投入しているはずである。
そして、一部には、
「中国本土政府は、新型コロナウイルスの根源は中国本土ではないと世界に訴えつつ、一方で、ワクチンを世界に先立って開発すれば、中国本土が、新型コロナウイルスから世界を救った、との論理展開を行い、中国本土にとって、災い転じて福となす、作戦に出るのではないか。」
との見方も出てきているのである。

日本は、世界は、今、瀬戸際に来ている。

混沌は深まるばかりである。

引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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