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2021年2月[Sanada発 現場から]


世界経済を俯瞰する


米国の中央銀行に当たるFRBは2020年3月、新型コロナウイルスの拡大によって、国際金融市場で米ドル資金不足が発生したことを受けて、9カ国を対象に米ドル資金を必要に応じて供給するスワップ協定を締結し、
「米ドル資金供給のパイプライン」
を設けた。
そして、その対象国とスワップ供与枠は、韓国、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、シンガポール、スウェーデンなど6カ国とは上限600億米ドル、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランドの3カ国とは上限300億米ドルとなっているが、FRBはこれを2021年9月まで延長することした。
一旦、国際金融市場はこれにて改めて安定することとなると見られ、こうした動きが、
「実体経済の回復が見られぬ中にあっても、株価を軸とした金融経済の好調につながっている。」
背景となっていると見られている。

また、新型コロナウイルスのワクチンを確保する動きが、世界的に活発になり始めている。
欧米などからの購入に加え、国産ワクチンの開発、更には輸出や輸送の「中核地」となり、一定の役割を担いながら、自国民用のワクチンを確保するような動きをする国も出てきている。  
しかし一方で、国際的な分配の枠組みに頼らざるを得ない国もあり、ワクチン確保が容易な国とそうでない国の格差が生じている、生じるであろうとの見方も出てきている。
更に、マイナス温度でのワクチン保存と輸送の問題もあり、事態は決して簡単な状況ではない。
そして、何よりもその効果、否、薬害の心配はないのかといった疑問、不安も出ている。

 世界経済は決して安定的に推移しているとは言えない。

世界経済見通し
 こうした中、世界経済を概観しておく。

世界的に信頼される国際機関である経済協力開発機構(OECD)は、新型コロナウイルスの感染再拡大が世界経済回復の道筋をより緩慢なものにしたと指摘し、各国政府が支援を尚早に引き揚げたり有効なワクチンが普及しなかったりすれば回復ペースはさらに遅くなると警告している。
OECDは2021年の世界成長率見通しを4.2%と2020年9月時点予想の5%から引き下げている。
新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)とロックダウン(都市封鎖)の繰り返しという状況は当分続く可能性が高く、今後も暫らくリスクが高まると分析した結果であると説明している。
 ユーロ圏と英国の成長見通しを特に大きく引き下げ、英国は4.2%(従来予想7.6%)としている。
米国も3.2%と従来の4%から引き下げた。
また、OECDは、日本の2021年の経済成長率は2.3%と予想、ユーロ圏は3.6%と予想している。

そして、
「政策にはまだすべきことが多くある」
とチーフエコノミストのブーン氏は述べた上で、
「公衆衛生か、財政政策か、いずれかがつまずけば、信頼が失われ、経済成長見通しは更に一層悪化するだろう。」
と厳しいコメントをしている。
また、
「新型コロナ治療普及の成功が回復の軌道を決める決定的要因の1つとなる。」
とも指摘、
「各国政府がロックダウンを終了し企業は業務を再開、人々は仕事に戻れるという大きな期待がそこにかかっていることから、遅延は深刻な打撃を与えるだろう。」
として、
「経済へのコストは大きく、それが脆弱な国家・企業発の金融混乱と世界への波及のリスクを高めるだろう。」
とも分析している。
 また、地域間の乖離が世界経済の長期的な変化に繋がるリスクが高まっているとOECDは指摘した上で、
「欧州と北米は2021年の成長にその経済規模ほどは寄与せず、中国本土が世界の成長の3分の1余りを担うだろう。」
と予想している。

 一方、各国政府はロックダウン措置解除後も経済への支援を続け、緊急措置が期限切れとなった時の「財政の崖」を回避するべきであるとも主張しつつ、公的債務は増えているが、借り入れコストは低いとしてOECDは強い懸念を否定した。

ただ、支出の一部が有効に使われなかったとし、
「財政支援と結果としての経済パフォーマンスの相関関係欠如がある。」
と指摘した上で、
「支援は破綻の恐れが大きい小規模企業やセーフティーネットの不十分な低所得者や貧困家庭、就学困難な子供など危機の影響が大きい弱者を対象とすべきである。」
とも訴え、
「政策による大規模な支援措置にも拘らず、良好なシナリオに於いてすらパンデミックは世界各国の社会経済的構造を損なうことになる。」
とブーン氏は論じている。

OECD OUTLOOK
経済成長率見通し
出所:OECD 単位:%
          2020年見通し    2021年見通し
世界全体      −4.2        4.2
G20       −3.8        4.7
ユーロ圏      −7.5        3.6
中国本土      1.8         8.0
韓国        −1.1        2.8
トルコ       −1.3        2.9
インドネシア    −2.4        4.0
米国        −3.7        3.2
オーストラリア   −3.8        3.2
ロシア       −4.3        2.8
サウジアラビア   −5.1        3.2
日本        −5.3        2.3
カナダ       −5.4        3.5
ドイツ       −5.5        2.8
ブラジル      −6.0        2.6
南アフリカ     −8.1        3.1
フランス      −9.1        6.0
イタリア      −9.1        4.3
メキシコ      −9.2        3.6
インド       −9.9        7.9
英国        −11.2       4.2
アルゼンチン    −12.9       3.7

[日中台韓国の投資概況]
 さて、こうした予測の中、日中韓台湾の投資動向について概観しておきたい。

 日本の国内投資の見通しは、
「新型コロナにより9年ぶりのマイナスへ」
となっている。
デジタル化など将来に向けた投資は増加しているものの心配な状況である。
そして、大企業(資本金10億円以上)の2020年度国内設備投資計画額は、製造業を中心に全産業で3.9%増となっているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画から実績にかけての下方修正の傾向を踏まえると、最終的には9年ぶりの減少となる公算が大きいと見られている。
直近の調査による2020年度の国内設備投資の業種別動向を見ると、製造業(8.1%増)は、化学や非鉄金属、電気機械などで自動車の次世代技術開発に向けた投資が継続するほか、デジタル化需要拡大に向けた投資も増加、非製造業(1.4%増)は、電力の維持更新投資に加え、通信・情報でデジタルインフラ整備に向けた投資が増加するが、新型コロナによる下押し圧力が広範に及び、運輸や不動産、小売が減少、海外設備投資も、全産業で3.6%減と2年連続で減少すると見られている。
尚、こうした中、新型コロナを受けたサプライチェーン見直しの内容として、製造業では、4割の企業が海外の仕入調達先の分散、多様化と回答し、次いで製品や部品の標準化・規格化が見られるとも予想されている。

韓国を見ると、韓国政府・産業通商資源部は、2020年7〜9月期の韓国に対する海外直接投資(FDI)は届け出ベースで52億3,000万米ドルと、前年同期対比43.6%増加したと発表、7〜9月期では過去最大を記録したと海外からの対韓投資が堅調であることを強調している。
そして、韓国企業についても、三星グループや現代自動車グループが、IT、半導体、水素社会化に向けた積極投資姿勢を示し、堅調であるとコメントしている。

台湾を見ると、台湾政府・経済部統計処が発表した統計によると、2020年上半期の固定資本投資額(機械設備や工場などの購入額、速報値)は1兆9,561億ニュー台湾ドル、前年同期対比7.2%増と高い伸び幅を記録しており、中国本土の増加幅(5.8%)を20年ぶりに上回ったとコメントしている。
米中貿易戦争の影響を受けた、台商(海外で事業展開する台湾系企業)のUターン投資拡大が大きく貢献したと見られている。

そして、中国本土を見ると、中国本土の設備投資は、意外にも、回復が遅れていると見られている。
即ち、中国本土政府・国家統計局が発表した2020年10月の各種統計によると、企業の設備投資は2020年1〜10月の累計で前年同期対比9.5%減少しており、景気の先行きに慎重な企業が多いと見られている。
生産は回復基調にあるがインフラ建設など公共事業頼みの色彩が強まっており、中央銀行である中国人民銀行の企業家アンケートでも、2020年7〜9月時点で、
「マクロ経済はやや冷え込んでいる」
との見方が強い。

実体経済の回復を意識した際、こうした企業の投資動向は今後もフォローしていく必要がある。

[EUと中国本土、経済連携協定]
さて、新型コロナウイルス感染拡大が続き、更に米国、ロシア、インドが自国内部の混乱が見られ、力を落とす中、中国本土は、
「漁夫の利」
を得ようとするかの如く、
「中国本土流の国際化、そして市場開放」
を餌にしながら、開発途上国、新興国はもとより、英国の欧州連合(EU)離脱、所謂、BREXITにより、混乱が見られ、更に、新型コロナウイルス感染拡大によって、EU域内市場の先行きにも不安があるEUをも飲み込み、一気に、
「世界の覇権国家の道」
を歩み出すと言う、初年度に2021年はなるかもしれない。
中国本土の用意は周到であり、
「いざとなれば、産業、経済面での鎖国が出来る国作りの推進を図る為に、製造2025を一気に推進する。」
一方、
「米英の覇権の大きな担保となっている基軸通貨、米ドルの地位を奪うべく、人民元経済圏の拡大を図る、そして、その際に、デジタル人民元経済圏を図り、通貨のデジタル管理化を強化して、米英の巻き返しを難しくしていく。」
そして、
「こうしたことを具現化する場として、一帯一路地域に加えて、RCEPを有効活用する手筈を整えた。」
といった動きを示しているのが、今の中国本土である。
こうした中、中国本土は、上述した、衰えの見える欧州勢の代表たるEUとの間で、
「経済協定締結」
で基本合意した。
そして、欧州では、中国本土とEUは、
「野心的な経済協定締結に合意した。」
と評価されている。

この合意は、画期的な内容を含む一方、多少、議論の余地がある曖昧な所があるとの批判もあるとの声はあるが、筆者には、
「中国本土の野心に対して、欧州は少なくとも一旦は乗った。」
という格好に映る。

そして、EUと中国本土間の今回の経済協定は、7年前から交渉が始まったものであり、今回、やっと合意に達したものであるが、今回の協定は、中国本土に下記義務を課す、即ち、下記内容を中国本土が欧州に譲歩しても、中国本土の覇権主義にはメリットがあると中国本土政府は判断したものと筆者は見ている。

1. 自国市場のEU企業への開放
2. 企業間の公平で自由な競争
3. 地球環境保護を重視
4. 世界労働期間・ILO基準の尊重、労働者の権利保護、強制労働の禁止
5. ウイグル族の人権保護

はてさて、英国や米国が本気で巻き返しを図らないと、中国本土の思惑は更に進展していくように思われる。
米国のバイデン新大統領は如何に動くであろうか?
また、ジョンソン首相、否、英国王室は中国本土の覇権拡大を一旦は容認するのであろうか?
新型コロナウイルス感染拡大のまだまだ続く中、今年は、
「中国本土の動静」
には目が離せない。

引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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