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2021年6月[Sanada発 現場から]


覇権と産業発展の方向性


世界には、
「情報覇権争い」
「通貨覇権争い」
が顕在化していると私は認識しています。
米中は大人の対応をしてくるのではないかとの思いがありましたが、それでも今、米中覇権争いが顕在化している背景には、中国本土の文民政権に対して影響力を強める人民解放軍の公安の影響力拡大があると私は見ています。
軍人は、私たちとは行動の思考回路が異なるので、何をしてくるか分かりません。
そこで、こうした覇権争いの中では、裏の裏をかく必要もあり、また、その前提では、先ずは、
「隙」
を作ってはなりません。
こうした中、情報覇権争いの主役となる産業界の動向にも関心が集まり、中国本土の情報覇権争いの先兵となっている、
「ファーウェイ」
やその延長線で通貨覇権争いに影響を与える、
「アリババ」
に対する国際社会、特に、
「英米の監視の目」
は強まり、それに対して、日本や韓国、台湾の企業動向にも関心が高まっているものと思われます。

そして、こうした中、総じて言えば、韓国勢は中国本土寄りとなっているように見られ、台湾勢は英米寄りになっているものと見られます。
また、体力を落とした日本勢に対しては、中国本土の、
「魔の手」
が及ぶのではないかと見られているものと私は理解しています。

そうした厳しい状況にある中、日立製作所は3月31日、米国のシリコンバレーのソフトウエア企業であるグローバルロジックを約96億米ドルで買収すると発表、年商の10%を超える金額を投じて、日本の電機業界で過去最高の合併・買収(M&A)案件を実行、日本の産業界からは、
「日立製作所グループ創業110年の企業の死活を懸けたギャンブルである。」
と言われながらも、国際金融筋の一部からは、
「日立グループは英米寄りの姿勢を明らかにしたと見られる。」
といったコメントも聞かれています。

また、その日立と共に日本の電子業界の看板企業であるパナソニックは、安定収益源で90年の歴史を誇っていた乾電池事業のうち、欧州での事業を売却、そして、その資金などを基にして、新たに約7,000億円を投じ、サプライチェーン関連のソフトウエア大手である米国のブルーヨンダーの買収競争に参入しました。
流通や物流施設用の監視カメラやバーコード読み取り端末で高いシェアを持つパナソニックは、ブルーヨンダーの人工知能(AI)物流分析技術を融合し、物流サービス市場に進出する戦略であり、それを通じ、家電など製造業に偏った事業構造をITサービス中心に転換するという動きを示し、やはり、英米寄りの姿勢を示唆したとも見られています。

更に、直近では、軍事技術を持つ東芝も英国や米国のファンドの資本参加を模索するなどの動きしています。

日本は、こうした情報覇権争い、通貨覇権争いの中、産業界も英米寄りの姿勢を深めつつあると見られ、私はこれで良いと考えています。
但し、もちろん、中国本土の反応とその虎の威を借る韓国と動きには警戒しなくてはなりませんがーーー

ところで、半導体の世界だけではなく、覇権争いの影響は電気自動車についても見られています。
ここで、韓国自動車産業協会(KAMA)の報告を基にして、その様子を見ておきたいと思います。

即ち、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて自動車市場が停滞する中、昨年の世界の電気自動車(EV)販売台数(プラグインハイブリッド車、燃料電池車含む)が前年対比44.6%増加したと韓国自動車産業協会(KAMA)が報告した記事に接しました。
以下では、その記事を引用させて戴きながら、私の見方を加えさせて戴きたいと思います。

即ち、同協会が公表した報告書によると、EVは2020年に世界で294万3,172台販売されたそうです。
尚、2019年は203万4,886台でした。
そして、内訳を見ると、バッテリーEVは202万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は90万台、燃料電池車(FCV)は8200台が売れ、前年対比でそれぞれ34.7%、73.6%、9.3%増加したと報告され、新車市場全体でのEVのシェアは、前年の2.2%から3.6%に拡大したとされています。
更に、メーカー別では米国のテスラが44万2,000台を売り上げ、前年(30万4000台)に続いて販売台数1位となっています。(尚、そのテスラは最近になり、中国本土のビジネス展開に於いて、中国本土政府の圧力を受け始めているとの見方も出てき始めています。)
続いて、フォルクスワーゲン(VW)の「ID.3」とポルシェ、アウディの高価格EVモデルを販売するドイツのVWグループは、前年(12万3,000台)対比211.1%増の38万1,000台を売り上げて2位になりました。
3位の米国・ゼネラル・モーターズ(GM)グループは、中国本土の合弁会社から発売した小型EV「宏光ミニ」の販売拡大で前年(9万4,000台)対比134.1%増の22万2,000台を記録、こうしたところに、米中の政治対立はあっても、ビジネス連携の様子が見られています。
そして、韓国の現代自動車グループは前年(12万4,000台)対比59.9%増の19万8,000台で、2019年の7位から昨年は4位に上昇したと誇り高く報道されています。
 モデル別の販売順位は、テスラの「モデル3」が33万6,000台で1位、宏光ミニが12万6,000台で2位、現代自動車の「コナ・エレクトリック」は、品質に問題はあるものの5万5,000台で5位につけたようです。
そして、韓国自動車協会は、
「欧州と中国本土市場の成長が、EV全体の販売増を牽引した。」
と分析しています。
欧州のEV市場では前年対比133.5%増の129万台が売れ、EVのシェアは前年の27.2%から43.9%に拡大して中国本土(41.1%)を上回ったようです。
単一市場では中国本土のEV販売台数が120万台で最も多く、中国本土は有言実行で電気自動車化を進めており、韓国は6万1,000台で9位となっているようです。
 欧州のEV市場の成長は、新型コロナの感染拡大で萎縮した自動車産業の活性化の為の補助金増額とインフラ構築予算の拡大によるものと見られ、また、温室効果ガスの規制強化に対応するための各メーカーの新モデル投入拡大なども影響を及ぼしたと分析されています。
最後に、KAMAの鄭晩基会長は、
「EV市場の成長は各国政府の補助金拡大など、インセンティブ政策の結果である。
まだ内燃機関車のような競争力を確保するのは困難で、補助金拡大、充電インフラ構築拡大などのインセンティブ政策が必要である。」
とコメントしている点を付記しておきたいと思います。
こうした点からも、社会主義的計画経済を進める中国本土はEV化には有利かと思われます。
そしてだからこそ、米国バイデン大統領主導で開催された今般の地球環境サミットでの裏での攻防はこの電気自動車の世界展開にもあったと見られているのであります。

今後も世界の覇権争いの中で、世界の産業界の動向、流れは変化してくるものと見ておきたいと思います。

引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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