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2016年11月[Sanada発 現場から]


韓国の苦悩と中国本土の通貨覇権に向けた動き


はじめに

 世界経済の行方もはっきりせぬ中、日本経済の行方も不透明であります。
 即ち、世界的には、英国の欧州連合(EU)離脱議論の過程でさまざまな不確実性が増大し、世界経済にマイナス影響を与えかねない、米国が段階的に利上げをするとしても一部のぜい弱な新興国の経済状況が不安定化する恐れがあります。
 こうした中、日本経済には円高進展の可能性も加わり、先行き不透明感が払しょくできないでいます。
 欧州情勢が落ち着き、米中関係も安定すれば先進国の株価も戻り、その過程で円安に戻るとの期待感もあるが、確実な見通しとはなっていません。
 こうした中、その日本の周辺諸国である韓国では北朝鮮情勢を背景とした核武装論が出てきており、一方、国際的な混乱に乗じて自国のプレゼンスを高めようとしている中国本土は人民元の国際通貨化を一気に図り、
「通貨覇権」
を意識した動きに出る可能性も出てきました。
 そこで、今回はその韓国と中国本土の動向をお伝えします。

北朝鮮の核武装化拡大に揺れる韓国

米国や中国本土などの最近の報道を見ていると、私は、
「米中は、北朝鮮は諸外国からの軍事的先制攻撃を受けにくい核抑止力を持ったと認識している。」
と見ています。
そうした意味では、
「北朝鮮の脅威は一段階高まった。」
とも認識しておくべきかとも考えています。
そして、こうした、
「北朝鮮の脅威の高まり」
を受けて、韓国国内には動揺が見られているとも考えられます。
例えば、即ち、韓国の世論調査機関である韓国ギャラップは、
「北朝鮮による5度目の核実験を受けて、韓国では58%の人が自国の核保有に賛成している。」
とする調査結果を発表しています。(因みに核保有反対は34%)。
本年1月の北朝鮮の4度目の核実験直後の調査では、全体で54%の人が核保有に賛成し、38%が反対しており、更に核保有賛成派が増えている状況が垣間見られます。
また今回、20代の55%は韓国の核保有に反対するとしたが、50歳以上の75%は核保有に賛成したという点が特筆されています。
また、与党・セヌリ党支持者の75%が核保有を賛成しており、野党も「共に民主党」支持者の50%、「国民の党」支持者の58%がそれぞれ賛成しています。
尚、こうした韓国国内の核武装論の高まりに関して言えば、米国の大統領候補であるトランプ氏の発言も少なからず、影響しているとも思われます。
また、北朝鮮に対する感情も悪化しているようです。
今回の5度目の核実験が朝鮮半島の平和に対する脅威であると回答する人は全体の75%に達しています。
北朝鮮の咸鏡道で起きている大規模な水害を巡っても、北朝鮮の要請があれば支援すべきだと答えた人は40%に留まったのに対して、支援すべきでないとした人は55%にのぼっており、韓国人の北朝鮮に対する感情の悪化も見られています。
こうした状況を受けてか、韓国の尹外相は、9月に行った国連の一般討論演説で北朝鮮の核と弾道ミサイルの開発について、
「最終段階に来ている。」
と述べたうえで、北朝鮮に対する厳しい制裁措置を含む新たな国連安全保障理事会決議の必要性を訴えていました。
即ち、尹外相は演説で、北朝鮮による5回目の核実験が従来の3年周期から僅か8カ月で実施されたことや、弾道ミサイルも今年だけで22発発射していることなどを説明しており、更に、北朝鮮は核兵器で韓国をわずか4〜5分で攻撃できるとの見方も示し、韓国国内で高まる危機感を訴えていました。
そして、国連安保理の制裁決議についても、
「これまでの決議の隙間を埋め、内容も拡大・強化しなければならない。」
と強調しています。
更に、北朝鮮がこれまでも国連決議に繰り返し違反していることにも言及しつつ、
「多くの国家がすでに疑問を提起しているように、北朝鮮が平和を愛する国連加盟国としての資格があるかどうか、深刻に再考してみなければならない時となっていると思う。」
とも語り、
「北朝鮮の国連加盟資格」
についてまで言及した点は注目しなければならないと思います。
こうした一方、韓国政府は、大統領府で開いた政策点検会議で対北朝鮮政策の見直しを行っています。
朴政権は従来、北朝鮮政策については、
「対話や周辺国との協力を重視する政策」
を掲げてきていましたが、これが事実上破綻し、現在は制裁と軍事的圧力を重視する政策を打ち出しているとも言えます。
北朝鮮情勢に伴う韓国の動揺は深まっていると見ておきたいと思います。

人民元の国際通貨化について

基軸通貨となることは、
「世界のモノやサービスの世界的な経済的価値判断基準となる。」
ことを意味し、その為には、先ずは、その通貨が国際金融社会で、国際化され、それが市場で認知されなければなりません。
基軸通貨として認知されると、その結果として、
「世界の主要なモノやサービスの価格の建値がその基軸通貨建てで、提示される可能性は高まる。」
といった現象が見られます。
そして、その主要なモノやサービスの価格の建値がその基軸通貨で提示されていくと、通常は、決済もその基軸通貨建てでなされていくこととなり、この結果として、国際的な金融決済を行っている金融機関は、
「決済通貨としての基軸通貨を自らの資産の中に組み入れていくことが不可欠となる。」
という状況となります。
その資金は、決済資金でありますから、不足しているときには直ぐに調達しなくてはならず、余剰となった時には直ぐに運用するべき資金となります。
そうした視点から考えると、国際的な決済活動を行おうとする金融機関は、決済資金の運用、調達が最もし易いところ、即ち、国際決済資金が最もたくさんある、基軸通貨を発行している国に、これらの資金を置くことになります。
すると、その決済資金の為に基軸通貨発行国に置かれた資金は、
「基軸通貨発行国の法治を受ける。」
こととなり、基軸通貨国の法に基づいて、資金口座の検査を受けたり、場合によっては、資産凍結などの管理・監督をも受ける可能性があります。
そして、これまで、そうした役割を果たしてきている基軸通貨は米ドルであり、よって、国際的な活動をする金融機関は国際決済資金の多くを米国内に置き、結果として、そうした資金は米国の法治を受け、時に米国当局のモニタリングを受け、或いは制裁を受けることもあるのであります。
資金洗浄のチェックなどは正にこうしたシステムの中で、現状、米国を中心に行われているのが実態であります。
ところで、私は、こうした基軸通貨を持つ国が、自国の法律によって、他国の金融機関までも管理・監督することに対する不満が積っていると感じています。
米国に管理・監督されることを嫌がる国として、中国本土が挙げられ、従って、中国本土は人民元の国際化を段階的に進め、昨年はとうとう、国際通貨基金の出資金の構成通貨(SDR)の一つに人民元をはめ込むことに成功し、その段階を更に進めています。
一方、EU離脱で注目される英国は、ここ数年、英国の主要な金融機関が米国の国内法によって英国の金融機関が資金洗浄のチェックミスを背景として米国政府から莫大なる罰金を徴求されていることに対して、強い不快感を示しておりました。
私には、こうした状況にあって、英国が人民元のSDR入りを容認したとの見方をしていますが、今後は更に、英国自身が、
「ロンドン市場での人民元の国際化」
を容認、人民元の国際取引を拡大していくことをサポートする可能性もあると一応想定しておくべきではないかと考えています。
英国の中央銀行と中国本土の中央銀行の連携が強まりつつある中、
「人民元の国際化」
についても大いに注意を払っていきたいところであります。

引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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